小山田大のクライミング日記
Profile
Search this site.
Others
<< 速報! | main | その後 >>
ついにその時が

この時、最初のトライで落ちてしまった最後のランジ手前、足の乏しい水平なホールドでなんとか回復させようと必死にレストしていた。

とどまり過ぎても良くないのは解っていたが1回目は焦り過ぎた。

疲れないように回復させ、最後の核心である1手に備えなければいけない。

レストしながら狙いを定めるがが、次のホールドはあまりに遠く見える。

弱気になりそうな気持ちを奮いたたせ、飛び出した。

かろうじて右手がフラットな縦ホールドを捉え、すかさず左足をヒール。

ムーブだけをやればなんてことのない残り3手がこの時はやたらにきつく感じた。

そして叫びながら右手はしっかりと最後の大きなホールドを掴んだ。

岩の上に立ち上がり、座り込んで空を見上げるときれいな月が見えた。

ついにその時が来たのだ。

 

下呂市の中山七里にあるこの岩との最初の出会いは今から約2年前。

まだ日本にもこんなに凄い岩があったのかと感動したのを覚えている。

この時、後の「涅槃那」成るラインは見え、ホールドを触った。

岩の節理の流れを読むと、右奥のルーフ最深部から左端の一番高いところに左上していくラインも見えたのだが、あまりにもホールドが悪く、かつ長く、この時は全く現実味がなかった。

 

その後、右最深部より中間部を直上してトップアウトする「涅槃那」を完成させ5段とした。

続いて中間部からスタートして左にトラバース後、直上する「プレセム」5段ーも完成、フルラインに向けてのスタート位置には立てた。

しかしどちらのパートもかなりハードで、ましてやこれを二本リンクさせるなど想像もつかなかった。

結局この時のツアーでは中間部からシットするバージョンさえ繋がらず、ブログの最後は涅槃那からのフルラインはスーパープロジェクトとし、V16はあるだろうと締めくくっている。

 

この時の感じとしては持久力の不足と、もっと時間をかけてやりこんで全体を良く理解しなければいけない様に思えた。

その後はジムでのトレーニングとドイツでのルートの登りこみ、九州でのハードな課題のトライと登り続け、今年の3月より再び下呂通いがスタートした。

 

ジムではここに来る前、2年間に渡ってトライをしていたプロジェクトが登れた。豊田では長らくプロジェクトとなっていたラインを完成させ「断捨離」5段ーとし、同じ下呂エリアのプロジェクトも登れ「パラダイム」5段ーとするなど、体はかなり仕上がっている様に感じていた。

そして今月20日からスープロのトライを開始した。

この2年間どこにいてもこのプロジェクトは目標の中心に位置していた。

期待と不安が入り混じった初日だったが、結果は懸念していた後半は上手くいき、楽観していた前半に打ちのめされるというものだっった。

前半部は前回の記憶と今回ムーブを実際に起こした感覚の落差が大きく、少なからず動揺した。

続く2日間はとにかくムーブをやりこんで体に覚え込ます事に集中して取り組んだ。

しかしやはり前半の核心である、右手の悪いピンチからアンダーを取るムーブにはなかなか順応せず、感覚は悪いまま。

4日目以降はスタートから繋げる事を意識してトライを重ねた。

その間も前半の確率は悪く、そこが出来ても後半の核心手前で力尽きるという感じだった。

とにかく気温が低すぎるのにも悩まされた、ソールも指も弾き、指の感覚の消失と共に如何ともし難かった。

 

この頃からツアーも残り僅かとなり、ストレスを感じ始めた。

5日目はリンク部分のレストポイントに幾つかヒントを発見。

レストし、体調を整えて臨んだ6日目は途中雨に降られ、トライを断念せざるをえなかった。

この頃はもうトライをするのに体も心も拒否するようになっていた。

義務的にトライを重ねても無駄な事は解っていたので、少し距離を置く事にした。

ツアーの日程も少しだけだが伸ばす事が出来、精神的な余裕も持てた。

 

そして3日後の4月4日、この日は朝から晴天で暖かく、登るには最高のコンディションだった。

いつもの課題でアップを済ませ、プロジェクトの全ムーブを復習し、レスト。

この時、いつもより調子が良い事を感じていた。

そして1回目、前半をかなり良い感じにこなし、レストポイントへ。

上手く休めていつも落ちている左手のカチ取りへ、あっけなく止まり、最後のレストポイントへ。

ここに来たらもう落ちないつもりだった。

が、緊張からかなんなのか、回復が不十分なままランジに入ってしまった。

腰が引けてしまい、ホールドを触るも捉えきれず、落ちてしまった。

これは本当にショックだった。

しばらく立ちなおれず、普段より多くレストして臨んだ2回目は後半の核心で失敗。

しかしこのトライで気持ち的には吹っ切れた。

 

そうなるとなんとなく楽になった。

体もふっと軽くなり、パンプした腕も回復したようだった。

 

そしてこの日、3回目のトライでこのプロジェクトを足元にする事が出来た。

 

未だに登れたのがなんだか信じられない感じだ。

「ここからスタートしてあそこまで行けたら凄いね」「まあ、夢のラインか」話したのが懐かしい。

 

夢見て切望して実現した。

 

課題名は「那由多」グレードはV16 6段ー

 

| - | 00:52 | comments(0) | このページのトップへ
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック