昨日屋久島の瀬切でトライを重ねていたプロジェクトを完成させた。
このプロジェクトは去年の四月にラインを発見。
掃除とホールドのチェックで可能性は感じたものの余りにも高く、かつランディングも悪い為なかなか本格的にトライする気になれなかった。
本格的にトライを始めたのは去年の11月から、4日間程のトライで核心となる下部前傾パートを解決。
下部核心は非常に鋭利なマイクロカチを全力で保持しなければならず、指皮の状態次第でムーブすら全く起こせない日もあった。
この時のツアーでは下部のみを解決し、上部は保留となった。
今年1月にこのプロジェクト完成を目標に再び屋久島入り。
とりあえず登れるまでは帰らないと、強い気持ちで望んだ。
トライ初日は上部の解決からだった。
時間をかけてゆっくりと解決していった結果、難しいムーブは中間部にあるガバを取る二手だけという事が解った。
その後の懸念していた最上部は意外にも簡単だった。
しかし最後リップにあるサイドガバを取るレイバックで使う左足が悪く、そこだけが不安要因として残った。
もしも何かのミスでそこで落ちた場合、下にある尖った大きな石に叩きつけられるのは明らかだった。
二日目は下部の練習に費やした。
右足の膝が折れるような深いキョンから右手のマイクロカチを取り、体を返していくのが酷く悪い。
ここには右足と左手の持感に微妙なコツがあり覚えるまで何回も練習した。
三日目はレスト明けで力があったのか何なのか繋げトライでかなりいい線まで行き驚いた。
もしや狙えるかもとトライを重ねるもカチからのランジを成功させる事ができず。
中間部と上部の練習をし、この日は終了。
完成が近づいている事を確信した。
そして次の日から待望の寒波がやってきた。
ここ数日この時期の屋久島にしては異常に気温が高く、もしも狙うなら気温が下がる夜しかチャンスは無いと考えていた。
しかしこのプロジェクトのサイズになるとライトで十分に照らす事が出来ない。
上部のリスクを考えると出来れば明るいうちに登りたかった。
レスト明けの25日、期待していた通り気温は下がり風も強くコンデションは最高だった。
アップの後プロジェクトのムーブを復習しトライ開始。
が、思うように体が動かない。
前日のトライでは失敗しなかったムーブで何度も落ちてしまう。
焦ると良く無いのは解っていたが少なからず動揺した。
少し落ち着いてもう一度個々のムーブを復習。
暫くレストした後、気合を入れてトライ。
キョンからの返しも完璧に決まり中継の左手、ランジの体勢を作り前回止まらなかった左手へ飛び出した。
距離が足らないと感じたがかろうじて止まった。
次はガバ取りの二手。
ここもギリギリ止まった。
ここからは落ちれないセクションだ。
集中して四手進み、問題のリップ取りへ、右手のサイドを取り左足のスメア。
少し手がかじかんでいたのもあって相当緊張した。
幸い、落ちる事はなくリップのガバを掴む事が出来、マントルを返した。
登れた事の喜びはもちろん大きかったが、怪我をせずに終われた事の安堵感の方が大きかったように思う。
このプロジェクトは下部のムーブのハードさに加えて高さを克服する精神面のコントロールも難しい課題だった。
特に自分はビビリなので上で落ちて下の石に激突したら、、、等と考えるとトライするのが憂鬱になる程だった。
それでもこのラインの持つ魅力には抗えなかった。
この巨大な岩の最も攻撃的な部分を真っ直ぐに登っていく。
誰もがここを登れたらと想うラインだろう。
また素晴らしい課題をこの島に残せて嬉しく思う。
課題名は「アロバヨ」グレードはV15 5段+くらいだろう。